内部被曝の恐怖 「何ミリシーベルト以下なら大丈夫」はウソ

日刊SPA!

2012.01.05 ニュース

― “最後の被曝医師”が語る人体に与える内部被曝の脅威 ―

【解説:内部被曝と外部被曝】

内部被曝と外部被曝では、被曝の仕方が全く異なる。内部被曝では、透過性の低いアルファ線、ベータ線のエネルギーがほとんど体外に逃げることなく、人体に影響を与える。これに対して、外部被曝では透過性の低い放射線は届かず、主に透過性の高いガンマ線で被曝する。体内に摂取した際に危険なのはアルファ線、ベータ線を出す核種である。

◆「年間何ミリシーベルト以下だから大丈夫です」というのは大きなウソ

 放射線というのは、人間には見えません。色も臭いもない。見た目には認識できません。

肥田舜太郎氏

 私はこれまでずっと広島・長崎で被曝した患者を診続けてきました。原爆のときは、火傷をしたり全身の粘膜から血が噴き出したり、頭髪が抜けるなどの急性症状がありましたが、今回の福島原発の場合は、長期的な「内部被曝」の影響が心配されます。

 よく年間何ミリシーベルトだとか、毎時何マイクロシーベルトまでなら大丈夫だとか言われていますが、これは外部被曝の場合のことです。内部被曝というのは外部被曝と違って、放射性物質を体内に取り込んでしまい、1日24時間ずっと被曝し続けるというものです。

 その影響は、その人の年齢や健康状態、生活態度、免疫の状態にもよりますし、その症状がいつでてくるかも、誰にもわからないことだからです。医者である私にだってわかりません。個人差があるので「必ず危険」だとも限りませんが、その人が病気になったり死んだりする可能性をアップすることだけは確かです。

 日本の政府や学者がついているいちばん大きなウソは、「(外部被曝線量が)年間何ミリシーベルトなら大丈夫です」ということ。内部被曝のことを全く考慮していません。体内に入る放射性物質は「それ以下なら大丈夫」ということはない。少しでも体内に入ったら、長期的に被曝し続ける。微量な被曝であれば大丈夫というのは間違いです。

 専門家というのは、政府の責任を隠したり、業界の利益を守ったりするために、ときに意識的にウソをつくことがあります。中には知らなくて言っている人もいますが。正確には、「今は大丈夫です。でも先々は病気になる可能性もありますし、何とも言えません」と言うべきでしょう。

 福島原発事故後の例で私が実際に報告を受けたもので言えば、多くは放射線に敏感な子どもに初期の被曝症状が現れています。

 下痢が続いて止まらない、しばらくしたら口内炎が出るとか、のどが腫れて痛いとか。多くの母親が心配していたのは子どもの鼻血です。鼻血がずっと続いて止まらない。そのうちに、両親にもそんな症状が出てくる。これは福島に限りません。私のところには、東京や神奈川、静岡などからもこういった相談が寄せられました。

 広島・長崎でも、爆心地近くにいて大量の放射線を浴びたわけではないのに、時間がたつにつれて被曝の症状が現れてくる人が数多くいました。こうした長期被曝患者に特徴的だったのは、猛烈な倦怠感があって動けなくなり、働けなくなるという症状を訴える人が多かったことです。集中力がなくなったり下痢が続いたり。本人もどうすればいいのかわからない。勤め先や家族の中でも信用されなくなり、社会的な存在価値を失ってしまう。医学的にはどこも悪くないので、医者にかかると「ノイローゼ」(当時は神経衰弱)と診断されてしまいます。私たちはこれを「原爆ぶらぶら病」と呼んでいますが、この人たちは生きていくのが本当につらかっただろうと思います。

 被曝をできるだけ少なくするために、「原発からとにかく遠く逃げろ」とか「汚染されてない食べ物を食べろ」などと言われています。でも、そんなことは誰にでもできるわけではない。

 家も仕事も地元の人間関係も放り投げて逃げられる人が、どれだけいるでしょうか。事故がおきて9か月以上経っています。これまで1日3食として800食以上、まったく汚染されていない食べ物を食べ続けている人は少ないでしょう。

 遠くに逃げても生活できて、汚染されていない食べ物を調達できるというのはごく一部の人々です。ほとんどの人々は、放射能汚染されたこの日本で生きざるをえない状況になっています。

⇒内部被曝の恐怖【中編】に続く http://nikkan-spa.jp/119088Link

放射線に対抗する唯一の方法とは?

【肥田舜太郎】

’17年広島生まれ。医師。広島市への原爆投下により自身が被曝、その後被曝者の救援・治療にあたる。臨床体験をふまえて「原爆ぶらぶら病」と呼ばれる症状や、内部被曝、低線量被曝の影響に関する研究にも携わった。

撮影/大西史恵 取材・文/北村土龍

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原発安全神話?(1) つなみ  

武田邦彦(中部大学)

「電気が欲しいから危険でも原発をやりたい」というのが政府、自治体、原子力関係者ですが、子供たちの日本、これからの日本の土地を大切にするために、私たちも「事実」をよく知って主導権をとれるようになっておかないと、子供たちを守ることはできません。

私は「安全な原発なら、そこで初めて原発を進めるかどうかを考えることになるけれど、危険な原発なら論外」という立場です。その意味では、私はどちらかというと「反原発」ではなく「反被曝」です。

今回から「誰でも判る原発の安全性」ということを目指して、少しずつ書いていきたいと思っています。まずは事故の起こった福島原発の状態から始めたいと思います。

・・・・・・・・・

福島原発は「つなみで破壊されて爆発した」とされています。政府も専門家もマスコミもそのように言っていて、だから「防潮堤を高くすれば安全」としていますが、それは錯覚です。

http://takedanet.blogzine.jp/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2012/01/05/bandicam_20120105_101440868.jpgLink

まず、福島原発の事故前の写真を見てください。「説明や言葉」ではなく、「事実」をゆっくりと自分が理解できる早さで納得することが大切だからです。

手前側が海(太平洋)で、陸には2つの長い建物(発電機が入っている)と、その奥に4つの箱形の建物(原子炉が入っている。白い色)があります。4つのうち、一番奥の建物は少し小さいのですが、これがかなり昔に建てた1号機です。そして煙突が3本見えます。

これが事故を起こした福島原発の肝心なところの「全部」ですが、つなみを防ぐ防潮堤はどこにあるのでしょうか? 「防潮堤でつなみを防ぐ」というのですから、原子炉が入っている4つの四角い建物より高い防潮堤があるように思いますが、実は防潮堤というのは海側にある細い堤防のことなのです。

えっ!と驚かれる人がいます。「防潮堤って、こんなに低いの?!」というワケです。でも、それで驚いてはいけません。さらに奇妙なことがあるのです。

http://takedanet.blogzine.jp/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2012/01/05/bandicam_20120105_102000811.jpgLink

この写真は事故がおこった後のものです。今度は海側の正面から見ていますが、手前が海で、写真の一番上(奥側)がもともと4つの白い箱形のたてものがあったのですが、爆発したので、右から2つめの建物だけが残っていて、残りの3ヶ(1号機、3号機、4号機のたてもの)はすっかり壊れて骨組みのようなものが見えるだけです。

そして中央部に見える2つの長い建物は無事で、元の場所にしっかり立っていますし、このぐらいの大きさで写真を見る限りでは、大きな破壊も受けていません。また長い建物の前にある円筒形の4つのタンクも、ほぼそのまま残っています。

・・・・・・・・・

さて、この2枚の写真(事故前、事故後)をじっくり見て、つなみが襲ってきた瞬間を想像してみましょう。沖の方からやってきた津波はまず防潮堤にぶつかり、そこでいったん高い水しぶきをあげ、防潮堤を乗り越えて手前の長い建物にぶつかりました。その時には津波の勢いはそれほどでもなく、建物は破壊されませんでした。またこの建物は背が高いので津波は建物を超えなかったのです。

2つの長い建物は間にわずかな隙間がありますが、その向こうには原発のたてものはなく、4つの原発の建物には「つなみ」は襲っていないのです?!

写真を見せずに言葉で「津波が建物を襲って、建物が破壊した」というと、誰もが「建物に直接、津波が来て壊れた」と思いますが、この写真を見て判るように実は「つなみ」というものは原子炉の建物には来なかったのです。

・・・・・・・・・

2つの長い建物にぶつかった津波は、そこでいったん止まったのですが、次に建物を迂回してチョロチョロと原子炉のたてものの方に回り込みました。それはすでに「つなみ」というようなものではなく「水位」が上がって建物が「静かに水に浸かった」という状態だったと考えられます。

http://takedanet.blogzine.jp/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2012/01/05/photo.jpgLink

3番目の写真を見てみましょう。この写真は陸側から福島原発を見たもので、写真の海側にカニの手のように伸びているのが防潮堤で、写真の左が「北防潮堤」、カニの手の右が「南防潮堤」です。だから、もしこの防潮堤を数10メートルにしても、写真の左端の海岸線はなにも防御するものがないので、津波で高くなった海水面はそこから海水が悠々と進入するのは間違いないからです。

・・・・・・・・・

「福島はつなみでやられた。だから「想定外」である。防潮堤は5.7メートルだったが津波は15メートルだった」という「言葉の説明」だけで、多くの人は満足していまいした。

そして、テレビや新聞がさっぱり写真や津波が原発を襲った様子を報道しないし、専門家は写真を見せて解説しないので、「つなみが原因では無く、単なる浸水だった」、「浸水を防ぐ設計がされていなかった」、「多重防御と言っていたが、実は一つも防御が無かったようなものだった」ということの議論が起こらなかったのです。

「防潮堤を高くすれば原発は安全になる」という「解決策」は実にばからしく感じられます。でも、このことが国会でも堂々と説明され、議員はすっかり満足しているようでした。また九州の玄海原発の再開問題でも「津波さえ防ぐことができれば良い」ということで納得している人もおられます。

「事実を確認せず、科学的なつじつまも考えずに、言葉の説明だけですっかり納得してしまう」というのは、今から40年ほど前から日本社会に流行している特殊な精神状態のように思います。それはあるいは「大人としての責任感がない」のかもしれませんし、また日本社会が集団的な精神病的状態にあるのかも知れません。

なぜ、「いい大人」がこんなに単純な矛盾に疑問を持たないのか、それについてはおいおい検討をしていくこととして、原発の再開問題では常にこのことに気を配らないと日本の子供や日本の土地を守ることはできないでしょう。

(なお、原発関係の写真などは被曝する人の健康に関することになるので、創造的作品ではなく事実そのもののものは一部、お断りをせずに使用させていただいています。)

(平成24年1月5日)

武田邦彦

— posted by 管理人 at 10:57 am   commentコメント投稿 [0]  pingトラックバック [0]

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